何度も考えた。
あたしのこと そして あいつのこと。
あいつの家のこと。










Act.4 進む道には・・・・











「おめでとうございます。2ヶ月に入ったところですね」


「ホラ、これがあなたの赤ちゃん」


モノクロの画面に映る小さな点を指しながら
説明がされる。






検査薬の結果を知った後
迷った末に駆け込んだ病院で
優しげな女医さんに言われたのは
新しい命を歓迎する言葉だった。










だけど あたしは何も言えなかった。
喜ばしいことだとは分かっていたけれど
素直に喜べる現状にあたしはいない。








俯いて何も言わないあたしの様子をきっと違う意味に感じたのだろう。






「・・・堕胎を希望されていますか?」




初めて真っ直ぐ女医さんの顔をみた。
ママよりちょっと年上そうなその人は
何かを諭すように話してくれる。






だ・だ・い・・・?


「人工中絶をされるのならあなたの身体のためにも早いほうがいいですよ」






 飲み込めなかった。
確かに悩んではいた。
だけどそれだけはまったく考えてなかった。






何も言えないまま
エコー写真を貰って病院を出る。


頭に残る言葉は


『人工中絶』


そればかりになっていた。






真剣に考えなくてはいけないのかもしれない。
いつまでも待てるものでもない。


しっかり考えて どちらにしろ、答えは出さなくてはいけない。








妊娠が分かった後も
学校とバイトと毎日往復を繰り返す。
誰にも何も相談すら出来ぬまま時間だけが過ぎてゆく。




いつものようにバイト先に向かう途中だった。




ぐらりと身体が揺れて
冷たいアスファルトの地面がすぐそこに感じた。




誰かに呼ばれたような気がした。
それが 道明寺ならいいのに・・・
そう思いながら
あたしは意識を手放した・・・・。


















目覚めた時、目に入ったのは
道明寺よりも長く一緒にいた友人だった。




「ゆ・・う・き・・・・?」




霞む視界の先には見慣れぬ部屋と
下がり眉毛の一番の親友。


「西門さんに連絡貰って・・・吃驚したんだよ・・・」






涙を浮かべながら心配してくれる親友に
何も本当のことを話していないのが後ろめたかった。


鼻を擽るのは柔らかなお茶の匂い。
ここは西門さんの家かなとぼんやり思いながら
辺りを見回す。




「つくし、どうして言ってくれなかったのよ!」
涙声で擦れながら
親友でしょう?!そう言われて差し出されたのは




あたしの鞄から零れたらしい
まだ 隠しておきたかった事実。
















アトガキ

自分で書いておきながら重いな・・・・って思ってしまうこの話。
ここのつくしはどっち選ぶんでしょうか?

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