Act.3 signal
あたしのお腹には
いま
新しい命が宿っている。
それを知ったのはつい最近。
あたしを取り巻く環境の変化に
自分の身体の変調に気付くのに遅れをとった。
毎日のように通う道明寺邸までの道のりが
遠く感じて
普段なんでもないことがきつく感じていた。
こみ上げるような吐き気に
世界が廻るように感じる頭痛に
崩れ落ちる身体を
必死に塀で支えた。
“妊 娠”
その二文字が脳裏を霞める。
1,2,3,4・・・・
あたし・・・生理、きて・・ない・・・?
ふと、過ぎった考えを否定するために
手帳を引っ張り出し
指折り数えながら行った行動は
不安を消すどころか
より肯定を示す結果しか見当たらない。
確かに身に憶えはある。
あの無人島の帰りの船で
道明寺が傍にいることが 嬉しくて
僅かでも 離れることが
この世の終わりの様に 怖くて
あいつに 道明寺に触れていないと
泣きそうだった。
ただ お互いを 必死に求め合った。
身体が 震える。
“怖い”
それしか思えなかった。
動揺を隠せないながらも
異常に冷静さを保つもう一人の自分が
身体を動かす。
何処をどう歩いたのか
どうやってそこに行ったのか
無意識のままたどり着いたのは
隣町のドラッグストアだった。
震える手で握り締めた妊娠検査薬を
やっとの想いでレジへと運ぶ。
逃げるように駆け込んだ
駅のトイレで
すがる気持ちで 答えを求めた。
心臓が 早鐘のように打ち続ける。
結果が出るまでのほんの少しの時間が
異常に長く感じる。
あたしは どちらの 結果を 望んでいるんだろう。
検査薬の示す結果は
+
陽性
はっきりしていることは ただひとつ
あいつは あたしを おぼえていない・・・。
アトガキ
どうするつくしちゃん!?
15000htありがとうございました。