逢いたかったのよ・・・。
たとえ
あたしを見てくれなくても・・・・・。










Act.2 迷宮










確かに あたしに触れていた手で
確かに あたしにキスしたその唇で
確かに あたしに囁いた言葉を




なんで そんな簡単に 忘れて




同じことを 海ちゃんに出来るの?




思い出して欲しくって
何度も通う道明寺の部屋には
最近いつも
海ちゃんが いる。




仲良さげに話す声が
廊下にまで響いていて
不安になる。


このまま あたしを忘れたままで
海ちゃんに
惹かれていくんじゃないかって・・・。




それでも 元気なあたしを
装って 道明寺に会いに行く。






「何しに来た?」




あたしの姿を見るなり不機嫌さが増して
苛立ちを抑えようとすらしない。




また 当たり前のように
海ちゃんが隣にいて
あたしに見せ付ける様に
道明寺の世話をする。




ズキンっと心の奥が痛む。






アタシヲミテ オモイダシテ



その想いでイッパイなのに どうしても
あたしは 言葉にすることが出来ない。






もしかしたら と思って
持ってきた
うさぎのヌイグルミや野球のボールそして土星のネックレスを
差し出す。





「いらねぇ・・」



「中身を見ようともせずにそんなこと言わないで」



無理やりにでも
僅かでもみて欲しくって
泣き出しそうな想いを 我慢して
目の前につきだす。
と、
バッシッとはたかれて避けられた。


「いい気になるのも大概にしろ。
大体、てめぇみたいな得体の知れないビンボー人が一度手にしたもんを
俺様がハイ、そーですかって受け取るとでも思ってんのか?ああ゛?!」



「なによ ソレ・・・」



「失せろって言ってんだ」



ぐらりと世界が回る。
そんな感覚に陥る。


キモチ ワルイ・・・・。
きっと
最近、心配事とかいろいろありすぎて
眠れない・食べれない
そんな毎日が 続いていたからだと思う。
ここまで 避けられるなんて 思っていなかった・・。





だけど
もう いい。


こんな奴のことなんて
忘れてしまえばいい。









「つくしちゃん・・・」





あたしに 無神経に話しかけないで。
ヤメテ モウ イイ・・・。


肩に触ろうとする海ちゃんの手を払いながら
真っ直ぐ道明寺の目を見た。


今 目の前にいる彼は
あたしの知っている道明寺じゃ ない。




「さようなら」




今の道明寺に求めるものなんてない
そう思ったら
ここにいる意味が ない 気がした。























――――――――――――――――――――――――――――――――――――














あの女すら追い出せば
この苛立ちは消えると思った。




なのに
何一つカワラネェ。





「司君、いいの?」



猫撫で声で付き纏うこの女にも
いい加減苛立ちをおさえられねぇ。





「てめぇもいつまでいる気だ?」



「え?」



「てめぇみたいな媚を売って男に取り入ろうとする
つまんねぇ庶民女を俺様がいつまでも相手にすると思うな」



ムカつく。
こいつの視線が 匂いが 動きが
そのすべてが・・・・。



「司君・・・どうしたの?」





・・・・・ウルセエ 
身体を支配するのはもう
怒りしか ない。




「お前も失せろって言ってんだ!
同じことを言わすんじゃねぇ。消えろ!!」










女どもを追い出しさえすれば 苛立ちは
消えてくれるものだと思った。

だが 現実は
支配する感情は 変わることはなかった。

だた 言いようの無い不安と
現わしようのない感情が
増えた気がした。










その日、道明寺が海ちゃんも追い出したことは
あたしは知らなかった。




そして
あたしにも大きな変化が起ころうとは
思いもしなかった―――――――。






アトガキ

最近、こっちを通常連載にすればよかった・・・なんて
ちょっぴり後悔しています。
これをベースに話が広がる広がる。
10000htありがとうございました。








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