霧の中で誰かが泣いている。
触れて慰めてやりたいのに
近づくとそいつは居なくなる。


目覚めた時に残るのはいつも喪失感。
きっとアレが失った記憶・・・・。










12月
会社と普段決して進んで行く事のないパーティー会場の往復を
イヤというほど繰り返す。
普段、会社でデスクにひたすら向かい仕事をこなすより数段忙しく
疲れる毎日に睡眠をとる暇すらなかった。


それでも僅かに空いた時間に脳裏に浮かぶのは
楽しげに話すあの二人の姿。
それを振り切るように
また仕事を繰り返す。






自ら進んで早く飛び込んだ
責任ばかりが付き纏うこの世界では
昔のように勝手な行動も制限されてしまい
思うような自由など何一つない。




どんなに頑張ろうとも
毎日新しい仕事が山積みされ
黒く埋まったスケジュールは
隙間を作るということを知らない。






毒だと知りながら
煙草と酒を安定剤のように身体に送る。




無理やりに落ちる眠りの世界は
僅かな幸福感を身体に巡らせ
目覚めた時にはどうしようもない絶望が支配する。
そうして現実に待ち受けるのは
逃げたくなるほどの忙しさと煩わしさ。
そして、焦燥感。






気が狂いそうだった。
この現状から抜け出すには
あの日感じた懐かしさを頼りにするしかないと思った。
誰がそう言う訳でもない。
俺の血がそうさせる 野生の勘。






足早に帰ってしまったあの日の行動ばかりが悔やまれる。


何故、もう少し接点を持たなかったのか、と。






何かしらの繋がりを求めようにも
知り得た情報からも簡単には近づくことなど出来ない。






残る希望は1月。
単位取得を理由に仕事を制限される
大学に行けば嫌でもきっとあいつらに会える。
このタイミングを逃すのは得策ではない。








あいつらとの繋がりは
いまの俺に残されたたった一つの手掛り。


















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