Act.7 守るもの
「「つくしお姉ちゃまは?」」
最近朝の妹たちの開口一番の言葉はこれだ。
お袋のいない家で俺一人じゃ手に負えずにいた
この愛らしい二人の小悪魔たちの相手を手伝って貰う事を表立った理由に牧野をこの家に呼んだ。
すぐに姿を消してしまう牧野を捕まえておくにはこうすることが一番手っ取り早かった。
だけどそれを牧野本人に気付かれるわけにはいかない。
「確かめてくるから大人しくしてろよ。じゃないと遊んでもらえなくなるぞ」
「「はーい」」
笑いながら走ってゆく。
この間までの泣いてばかりで言うことを聞かない姿は
何処に言ったのかと思ってしまう。
様子を見ようと牧野の部屋を訪ねる。
「わりぃ、起こしたか?」
音を立てたつもりはなかったが、どうやら起きたようだった。
「ううん。大丈夫。ありがとう」
「気分はどうだ」
「よくなったよ。そろそろ起きようかな?」
前の牧野程ではないが、あの日見た決意で一杯の強張った笑顔より少しやわらかくなった表情に少しほっとした。
「無理、するなよ」
「せっかく美作さんが誘ってくれたのに、あたしってば全然役に立ってないね」
「いいって。それより・・・双子たちがお前に会いたがってるんだけど、顔見せることって出来るか?」
「うん、あたしも芽夢ちゃんと絵夢ちゃんに会いたいな」
牧野は思いのほか悪阻が酷く、殆どを寝室で過ごすことが多い。
たまに学校に行っても、クラスに漂う複数の香水の香りが合わないらしく
早退してしまう。
それでも双子の相手をしていると気が紛れるからと言って、
二人と一緒にいようとする。
そんな牧野に二人はすっかり懐いてしまった。
時間がないと、このままじゃいけないと呟く牧野にとって
ちょうどいい気分転換なのかも知れない。
「美作さん・・・」
「ん?どうした?」
「・・・・道明寺、どうしてるかな・・・?もう、元気になったかなぁ?」
ギュッとシーツを掴んで零れそうになる涙を見せないようにと顔をうずめる。
思うようにいかない身体が、変わらない現状が不安を感じさせてしまうのだろうか。
直接話すことが難しいなら
誰かが橋渡しをするべきなのだろう。
事を動かすために動き始めなくてはいけない時期なのかもしれない。
アトガキ
すすんでないよね、どうしましょ。