記憶を失った。
何かが足りていないらしいが
それを取り戻すことも無く
もうすぐ3年が経とうとしている。
高校を卒業して
英徳大に進学をしたものの
片手間にはじめた仕事が妙に忙しく
ガキの頃からつるんでいた
F3の面々とも
次第に離れていった。
記憶を無くしても
困ることは特に感じられず
無くした当初
妙に馴れ馴れしい女がいたが
無くしたものと関係があるとも思えなかった。
今の生活で
確かに言えるのは
世界から“色”がなくなったということ。
色がないと言っても
赤は赤だと認識できるし
本当に色が分からないわけではない。
ただ
すべてがくすんで見えて
全体が 暗い。
それが
失った記憶とどれくらい
関係があるかなんて
考えようともしなかった。
記憶を無くしても
日常生活になんら支障は無い。
必要性を感じられないものにかまっている余裕は無く
無くしたものがあることすら
忘れてしまうほどだった。
・・・・はずなのに
最近
妙に
記憶のことが
気になって仕方が無い。
生活の中心は会社になり
仕事関係以外に俺を訪ねて来る奴などいなかった。
そんな中での
突然の訪問者が
今の生活に
大きな変化をもたらす事になるなど
思いもしなかった――――――。
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