流    星 















誰もが夢の世界へと身を落ち着かせ
世界が静寂に包まれた中
一人の青年が、悲しげに闇に包まれた空を見上げる。
東の空には上り始めたばかりの
うっすらと輝く下弦の月。








「エンディミオン王子?」








不意に掛けられた声に
腰の剣に手をかけ緊張が増す。




緊張が一気に高まる。
小さな光がゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。
落ち着いていたはずの心臓が
次第に鼓動を早めてゆく。






ガサリと音を立て
闇と一体化した森から
何かが現れる。




燃えるように蠢く紅い髪をした魔導師がゆっくりと歩みをこちらに進める。




声の主が確認できると王子と呼ばれた青年は
安堵したように肩を落とし
剣に掛けていた手をゆっくり離す。




「ベリル・・か・・・」




ベリルと呼ばれた女は、彼がこの場にいることを訝しげに見つめる。
が、たいした追求もせずにただ問う。




「こんな夜更けに眠れないのですか?」




「ああ・・・そんなとこかな」




青年はその真意を知ってか知らずか、
ぎこちない笑みで曖昧な返事を返す。








「ベリルはこんな遅くに何をしていたんだ?」






「私の占いは闇が深いほうが正確に判断出来るのですよ」




手に持った長く年季の入った杖を軽く持ち上げながら笑みを漏らす。




「それに、最近あまり良くない結果ばかりが出ていますの・・・」




あの月の者が降りてくると特に・・・。




思いのほか険しい表情をする王子にベリルは続けようとした言葉を飲み込む。




エンディミオンはベリルに気付かれないくらいに
ゆっくりと僅かに視線を天へと延ばす。






「今日は あの方は いらっしゃいませんわ、きっと」






全てを見透かしたようにベリルは答え、彼に否定も弁解もする余地を与えない。
ただ、お互いの顔を正面から真っ直ぐに見つめあう。




「それに・・・」




物知りげに笑う。








「もうすぐ、クンツァイト殿が見回りをされる頃です。
見つかりたくは無いのでしょう?」






「分かった。今日は大人しく戻るよ」






“降参”とばかりに両手を挙げ表情を緩めた。








「お休みなさいませ、よい夢を・・・」






彼の後ろで
月から一筋の光が走った。






もう 会う機会を失ったとも知らずに・・・。








魔導師の顔には満足げに






笑みが零れ、闇へと溶けた。


















アトガキ


一度は書いてみたかったベリル様のお話。
これ以上弄ると永遠にお蔵入りな基がするからupしたけれど
肉付けがいまいちなんで、いつかリベンジしたい、うん。

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