「つくし達はいつだったの?」


その質問に あたしの頬は ひきつった・・・。






キ  ス







「あんたのせいだからねっ!!」





湧き上がった怒りというか 恥ずかしさに
耐え切られなくなって
思いっきり投げた クッションは
 帰宅し タイミングよく
リビングに入ってきた 道明寺の顔に見事に的中した。




「てめぇ・・・」




ボトリと落ちたクッションの下からは
しっかりと青筋の立った
怒りに満ちた 道明寺の顔・・。


まあ 確かに 疲れて帰宅して
歓迎や労いの言葉もなく
ワケも分からないまま
顔にものが飛んでくれば 誰だって気分は悪いわよね・・・。




だ け ど


今日のあたしの
やり場のない・・・というか
怒りの原因は 道明寺も確実に関わっていて
というか、当事者であって・・・


いきなりものをぶつけたことに関しては
謝らなきゃって思うのに
説明しなきゃって思うのに 言葉は思うように出てこなくて


「はぁーーー」


と、深いため息をついて
  ストンッとそれまで座っていたソファーに
落ちるように座った。


いつもと様子の違うあたしに気付いたのか
いつもの様に怒鳴りまくることもせずに
ボスッと音を立て横に座る。


「なんだ?今日は中学の時のダチと会うって楽しみにしてなかったか?
なんかいやなことでもあったのか?」




なんでもお見通しと言わんばかりに
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて
あたしの顔を
覗き込む。


妙に我慢強く話を聞こうとしてくれる
道明寺の姿勢に あたしはポツリポツリと話し始めた。




「今日ね 話の流れで、さ。
*****の話になったの。でね・・」


「あ゛?聞こえねぇ」


「だから・・・・ファーストキスの話になったの!!!」


「おまっ声でかすぎ」


「ごめん・・」


「で?」


「でっ?て・・・。言えないでしょう」


「なんで?」




「じゃあ言っていいのね?
あたしの一番好きな男の前で
しかも人がいっぱいいる中で
あたしの一番嫌いな男に
だまし討ちを食らって
キス されましたって!!
それが今の婚約者ですって!!!」




「好き嫌いはこの際ともかく、
だまし討ちってなんだよ!?
あ、あれは
牧野が俺様にしてきたんだろうが!!」


た、確かにあの時は
慣れないヒールに躓いたかも しれないけど・・・


「じゃあ、いきなり怒り狂ったあんたに襲われて
抵抗空しく 奪われましたって言うの?しかも強姦されかけましたって」










「・・・・・・・それは・・・・やめろ・・」






「ホラ、いえないじゃん」


じゃあ次は?って考えると
あたしは
道明寺に ずーっと何度も
クチビルを奪われっぱなしで・・・・。


しかもその殆どが
好きだと自覚する前 付き合う前で・・・。


思い出せば思い出すほど
自分のガードの弱さと道明寺の強引さに腹が立ってきて・・・。




付き合い始めた時からって考えても
それが曖昧で よく分からない・・・。






―――――その後。
散々話し合った結果
口裏を合わすことにしたけれど
あたし達が
ファーストキスをいつに捏造したかは
それは 当分 二人だけの秘密だったりする。















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