気が狂いそうだ・・・・。


あの日から
ゆっくりと会釈をしたあの姿が
美しく流れ落ちた髪が
燃えるように赤い戦闘服が
、 今も頭から離れなかった。






ハジマリは突然に・・・





マスター・エンディミオンを守る四天王の中でも一番年下の僕が
マスターの想い人月の姫君と接する機会なんてほとんど無かった。
それが、偶然の重なりとはいえ、ゲートまで送ることになるなんて。
共に送りことを命じられたネフライトは
早々に用があるとさっていた。






緊張感だけが身体を蝕んだ。
何を話せばよいのか、イヤ、話してもよいものかと。
だが、
月の姫君とは年も近いせいか、話が弾んだ。
屈託無く話す姫にマスターが惹かれたのが少し判った気がした。


話を始めると最初に感じた緊張感は無くなり
楽しい時間が過ぎてゆく。
ゲートまでの時間は思いのほか短く感じ、あっという間だった。








幼さがどこか残る月の姫君とは思いのほか話があった。
と、言っても話の中心はマスターのことと護衛者達への不満が主だったが・・・。




「あっ・・・」


小さく声を上げると歩みを止める。
口元に手を当て一点を見つめたまま動かない。




「どうかされましたか?プリンセス」




見る見る青ざめていったその表情に何事かと声を掛けると
はっと我に返ったようで
何度も僕の顔と見つめていた先を交互に見つめる。






「ジェダイト様」




「え、うあ、は、はい」




目上の人に様付けで呼ばれるのは
慣れてはいなかった。
間の抜けた返事をしてしまったことに
顔が熱くなる。




「ここまで送ってくださってありがとう。感謝いたします。
でも・・・せっかくヴィーナスから逃がしてくれたのに・・・」




そう言うと視線をずらしゲートがある方角を見つめる。
そこには
ヴェーナスというプリンセスの守護神が着ていた戦闘服とよく似た
紅い衣装纏った女性が見える。




僕が顔を向けたことに気付くと
その女性は
長く美しい漆黒の髪をサラサラと流しながら
ゆっくりと会釈をする。




プリンセスと違った美しさに目が離せなかった。




「エンディミオンに伝えてくださる?
また、お会いしましょうって」


プリンセスの言葉にももう完全に
上の空だった。




「マーズ!!」




ふわりとドレスを翻し
彼女の元へと走り行くプリンセスを視界の端で見た気がした。


マーズと呼ばれたその人を
ゲートの先へとその姿が消えるまで目が離せなかった。
声は聞こえないけれど
全てをはっきり見ることの出来る距離ではないけれど
仲のよさそうに話す姿が見える。






目に焼き付ける。
名前を忘れないようにと何度も口にする。


ただ思うのは




もう一度 逢いたい。




・・・初めてマスターが
禁忌を犯してまで会いに行く理由が分かった気がした。








アトガキ


書くのが久し振りすぎて
妙な感じです・・・・

Back