Love Letter









ただ 逢いたかっただけなの・・・・。




彼女がそう、漏らした。








虫の居所の悪さをそのままに怒鳴るように
叱責したのは まだ ほんの数分前。




気まずさを持ちつつも
今度は親友として それもかなり久し振りに
“セレニティ” と、そう呼んだ。






背中合わせにお互いより掛かって
ただ無言のときを過ごす。




名前を呼んで 傍に行ったものの
この先なんて声をかけていいのか分からない。
『さっきはごめんなさい 言い過ぎました』
それを言ってしまえばすむことだろうケド、なんとなく言いたくはない。








「ヴィーナス、あのね・・・・」
やっと聞き取れるくらいの小さな声で






ただ 逢いたかっただけなの・・・・。






彼女がそう、漏らした。








身の回りで起こっていることを知らないわけじゃないわ。
この恋が、続かないことも分かっているの。
いつかは諦めなきゃ、終わらせなきゃいけないって。
それでも、逢いたいの。
たとえそれが、愚かなことであろうとも。




あの人が笑ってくれる。
それだけで幸せになれる。
あの人が悲しい顔をしている。
それだけで私も悲しくなる。




だけど一緒にいることでいいことは倍に 悲しいことは半分に出来る気がするの。
だから傍にいたいと思うの。
痛みも喜びも悲しみも 感情の全てを。
分かち合いたいと・・・・。
ただその相手が、地球の王子だった、だけ、なの。




それは、本当に間違ったことなのかしら。
たとえそうであっても
後悔なんてしてないわ。
だって。
私には私達には必要だったのよ。
こうしてお互いを想う事が。






いつかは会うことを止めなくてはいけない。
みんなが言うように この想いが成就することはないことも 本当は分かっている。




子供のように 困らせてばかりだけど。
素直と わがままと 自分勝手 の区別もまだ つけることも出来ないけれど。






今はまだ 自分の中にある気持ちを優先してしまうけれど。




いつかお互いに離れて
それぞれ本来の立場で
また会うことになった時、笑い合えるようになっていたい。






ずっとずっと先に。
この恋を笑って話せる自分でありたいと思うの。
とても素敵な恋だったっていえる自分でいたいのよ。




愛しているから 幸せになって欲しい。
自分の手で幸せに出来るのなら もっとうれしい。
そのためにも まず自分が幸せでいなくてはいけない。
私が幸せである為には 自分の気持ちに素直でいることなの。












だからね、もう少し 待って。
月のプリンセスとしての立場を忘れてしまったわけじゃないから。
ちゃんとわかっているから・・・。












まだまだ 子供だと思っていたのに。
大人になりきれてないのは 幼いのは自分のほうだった。
ここまでしっかり分かっていてくれたとは 思いもしなかった。
初めて聞いた彼女の気持ちに 
諦めちゃだめよ、と言いたかった。










「分かったわ。だけど! あたしはあなたの友人である前に四守護神としての立場があるから今までどおり容赦はしないわよ」






それは 捨てきれない あたしのプライドだったかもしれない。






「うん。ありがと」






でも、またヴィーナスのドレス姿見れるのなら、公務の日に地球に降りるのも悪くはないわ。




笑いながら話すその声が
いつもの とまでは行かなくても 元気さを感じられて安心した。






「冗談!!もう絶対しないわよ。あたしの影武者人生は終わったんだから!!
ドレスを着るときは あなたの横に並ぶ時のみにさせていただきます」




四守護神として、いつかは戻る金星のプリンセスとして・・・・。












ヴィーナス、私はあなたも大好きよ。






去り際に 彼女が発した言葉。
きっと彼女は 今 泣きそうな顔をしている。




私もよ、プリンセス。
振り向かず、その言葉も伝えず、ただ、頭越しに手を振る。




その言葉自体はうれしいものだが、
“大好き”と“愛している”の違いにちくりと胸が痛んだ。
















マーズに言われたあの言葉が また 木霊した。








“結局、あなたは あの方の一番でありたいのよ。”
















アトガキ

ホントはこの話の前に1話書き終わったものがあったんですが
それを上げるにはその話に繋がるように
最低でも3話は書かなくちゃ繋がらなくなっちゃたので
先にあげちゃいました。

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