くちびる
白く 細く 長い指が
ゆっくりと まるで三日月を撫でる様に
柔らかな唇にふれる。
まるで大人へと変わり行くその姿は
うれしさと 寂しさとを同時に この胸に呼び寄せる。
ゆっくりと赤みの弱いルージュを引く。
鏡越しに見る彼女は まだこの視線に気づいてはいない。
薬指で馴染ませるように ゆっくり指を はわせる。
ゆっくり ゆっくりと・・・。
赤く 紅く染まる 月・・・
消してしまいたくなる衝動・・・。
「どーしたの?」
視線に気づいた彼女が 鏡越しに聞く。
“コイコイ”
手招きをして彼女を呼び寄せる。
「ん?」
ベットに身を投げ 呼んでいた新聞を閉じると ふちにおとなしく座った
彼女の手をグッと引き寄せ その身を抱き寄せる。
大人になろうとする彼女を消し去るように
そのくちびるに何度も キスを繰り返す。
何度も なんども・・・。
「はぁ・・っ・・」
甘い時と息が 部屋中に満ちる。
「う〜」
すっかりルージュの落ちた唇を 愛おしげに撫でる。
彼女は
すかっり ご機嫌斜めだ。
「もう、せっかく塗ったのにぃ・・・」
ぽかぽかと俺をたたき 頬を膨らまし、
化粧を直しにドレッサーへと離れる。
「やばいな・・・」
小声で呟く。
――――――癖になりそうだ・・・。
アトガキ
記憶じゃ一番古い拍手分です。