『また、明日ね』

あの約束は まだ守られていない





〜I wanna know your soul〜





あいつが 道明寺が突然居なくなって
今までで一番の行動力で NYに迎えに行って

・・・行ったのに帰ってきたのは
あたしと迎えに来てくれた花沢 類だけ。


ねぇ 覚えてる?
お鍋 またやろうっていったよね?
また明日ねって 別れたよね??
約束 守ってくれるんだよね?


道明寺
もう あの日から半年経つよ・・・。


消すことの出来ないあいつのメモリー
ほんのちょっと前まで履歴はあいつの名前でいっぱいだったのに。
今は探さなきゃ見つからない・・・。
それでも
毎日繋がらないと分かっているあいつの番号を呼び出しては
眺めてしまう。
もう完全に癖になってて。
気がついたらあふれ出してる想い。




あたしは 何とか英徳に通い続けることが出来ていた。
両親の仕事が見つかっても
あたしのバイトは減ることはなく
むしろ
連絡の来ないあいつを待つ苦しさを
バイトに励むことで忘れようとしていた。


ただがむしゃらに働いて
いまだになじめない教室で勉強して
時折 顔を見せるF3の面々にあいつのうわさを聞く。
夜はいつもなかなか眠れなくて
鳴らない携帯を
抱きしめて眠る。
そんな日々。


いつもと変わらない放課後。
また いつものようにバイトに行った帰りだった あの日。
偶然目にした花火大会の看板。
あいつと行きたかったな なんて
何でもあいつと繋げてしまって。
あたしってば
この半年で随分と涙腺が弱くなった気がする。


ふと 携帯が鳴り響く。
知らない番号だったらいつもなら出ないのに
出なきゃ後悔するって
なぜか思って
あいつを思いながら耳に当てる。


「もしもし?」
「・・・・・・・・」
「もしもーし!」

人が泣いてるときに
イタ電かけてくるなんてヤナ奴。

切ろうとボタンに手を伸ばしたとき
懐かしい でもいつもすぐ側にいるような
あの低い声が響いてきた。


「・・・・・・久しぶり」
「・・・・・ど・う・みょう・・・じ・・?」
「おう 元気か?」
「げ、元気か じゃないわよ。今まで連絡してこなかったくせにっ」


「わりぃ・・・牧野 泣いてるのか?」
「な、泣いてなんかないわよっ」
鼻をすすり上げながら 強気の台詞吐き出す。
「まっいっか。それよりさ、」
「うん?」
「明後日そっちに帰る。時間空けとけ」
「え?ちょっと」
「・・・約束 忘れたわけじゃないから」


せっかく涙止まったのに
あんたが変なこというから。
また 泣けてきたじゃない・・・。


「あ、ねえ。花火 花火見に行こうよ。だってもう 夏 でしょう?
この時期にお鍋は熱いし うちじゃ ほら 両親が居てゆっくり話せないし・・・」
「お、おう。お前がいいならそれで」
「うん 楽しみにしてるね」
「当日迎えに行く」
「・・・うん」

うれしいの?
それとも
とうとう来た約束の日がつらい??
その日はずっと
涙が止まらなかった。




伸ばした髪を不器用ながらひとつに結い上げて
浴衣の柄に合わせた簪をさす。
奮発して買った紺地の浴衣は 
少しは大人っぽく見えるだろうか?
背の高い 大人びたあいつの横に立っても
少しは釣り合うだろうか・・・・?


待ち合わせに時間きっちり あいつは姿を現す。
「よお・・」
「おうっ」
お互い照れ隠しに前と同じ様に言葉を交わす。
道明寺 ちょっと痩せた?
ううん、やつれ・・た??

「浴衣 変だったかな?」
「いや、よく似合ってる 髪 伸びたんだな」
「・・・ありがと」
髪は切らなかったんじゃない。
切れなかったの。
あんたの知ってるあたしが減ってしまうようで。
あたしの中の道明寺の思い出も消えてしまうようで。
これ以上 失うことが 怖かった。

「いこっか」

差し出された手に素直にあたしも手を重ね
手を繋いで
ぶらぶらと街を歩く。
お茶をして
小さなことで笑いあって
みんなが当たり前にしていることが
あたしたちはずっと出来なかった。
何気ない会話ひとつでも あたしたちには重要だった。



「ちょっと、花火大会の会場あっち!」
「いいんだよ。俺様が庶民に混じって人ごみの中で見るなんてできるわけねぇだろっ」
「じゃあ、どこいくのよっ」
「行ってからのお楽しみ」


なんとなく。
行き先はわかった。
会場近くには あいつの家が経営する
メープルホテルがあるから・・。




「なんか贅沢だよね メープルのスウィートを花火見るためだけに使うなんて」
「相変わらず ビンボー症だな おまえは」
「これが普通なんだってば」

「何なら一緒に寝るか?」
「・・・いいよ、寝ても」
「バーカッ。らしくないこといってんじゃねぇ」
「そ、だね・・・」
道明寺が断ってくれてほっとしている自分と
残念に思う自分が居る。
だって 今日は
終わりの始まり。
それもあと少しで
完全に終わってしまう。


いつの間にかに取り出していた
シャンパンを
道明寺がゆっくりと飲み干す。
「お、始まったな」
「きれーぃ」


綺麗だけど
なんかせつない。
だってあたしたちみたいじゃない。
時間をかけて打ちあがって
咲いたと思ったら
儚く散ってゆく。


横に座るあいつの顔を見ることは出来ない。
泣き出しそうな心を
いつ流れてもおかしくはない涙を
必死に隠すように打ち上げられる花火を見続ける。


これ以上
触れてしまえば 次を求めてしまう
離れることが 更に 難しさを増してゆく。
それは きっと あいつも同じ・・・。


それでも 少しでも長く 一緒にいたいと思うのは
わがままなのだろうか?


「牧野 ごめんな。ほんとはもっと早く帰ってくるつもりだったのに」
「仕方ないよ お父さん倒れちゃって大変なんでしょう?
もう大丈夫なの?」
「ああ。何とか安定はしてる。だけど もう家のことで俺がやんなきゃならねぇことが出来てさ」
「うん」
「今は 日本にも長くはいられねぇ」
「うん・・・」
ぽつり、ぽつりと
歯切れ悪く会話が続く。
合間を縫うように花火が上がり続け
あたしたちを照らす。


「牧野。俺たちもう一度・・・」
言葉を遮るようにあたしは言う。
「あたしさ、この半年すごく苦しかった。道明寺に会えないことも
いつになるか分からない日を待ち続けるのも・・・」


きっと 道明寺は
やり直そうって言おうとしてた。
今日一日 ずっと。


「この花火大会 最後に一番大きな花火上げるんだって」
「?」
「それが上がって 消えたときをさ。最後の合図にしようよ。
それで、もう終わり。もう 会わない」
「もう、会えないのか?会うことさえ駄目なのかよ」
「うん 今は会わない」
「今は?」


「・・・もし ずっとずっと先にさ。偶然に再会でもして。
お互い相手が居なくて。
気持ちが 残ってたら・・・・やり直そっか?」
「俺は、かわんねぇ・・・」

お前もだろ?
そう、道明寺がつぶやいたような気がした。





花火が終わる。
それは
あたしたちの幼い恋の終わりでもある。

「バイバイ」

ホテルを出て そういって
あいつと逆の方へと歩みを進める。
泣くもんか。
ぜったい・・・。
泣き虫なあたしも今日でさよなら。



明日になれば また
変わらず太陽が昇り
眩しいほどの日差しが降り注ぐ。
ちょっぴりの嫌なことと 同じくらいのいい事が繰り返す。
そんな日々がきっと待ってる。



どんなに時が経ったって
きっとこの想いはあたしも変わんない。









・・・・・道明寺
さっき ホントはね 
あたしも好きって
気持ちはずっと変わらないよって。
言いたかった。
















アトガキ

現在、続編考え中・・・。
お題に頂いたのは『doa』の楽曲
素敵な曲ばかりなんでぜひ、聴いて見て下さい。



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